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  2. 東山魁夷主要作品

1950 (昭和25)年 42歳 東京国立近代美術館蔵 紙本・彩色/134.4×102.2
「道」という作品を描いたことは、私に取って大きな意義をもつものであった。
過去への郷愁に率いられながらも、未来へと歩みだそうとした心の状態、これから歩もうとする道として描いたところに、生への意志といったものが感じられる。(中略)
もっとも、私の歩みは、いつも郷愁の影が尾を曳いてはいるが、この作品には、絵画的造型への意欲というものがあらわれてきている。——
(東山魁夷/『東山魁夷画文集3/新潮社』より)
「道」にしても、ただ、画面の中央を一本の道が通り、両側にくさむらがあるだけの、全く単純な構図で、どこにでもある風景である。しかし、そのために中に籠めた私の思い、この作品の象徴する世界が、かえって多くの人の心に通うものらしい。誰もが自分の歩いた道としての感慨をもって見てくれるのである。

私が好んで描くのは、人跡未踏といった景観ではなく、人間の息吹がどこかに感じる風景が多い。しかし、私の風景の中に人物が出てくることは、まず無いと言ってよい。その理由の一つは、私の描くのは人間の心の象徴としての風景であり、風景自体が人間の心を語っているからである。
〈「一枚の葉」『日本の美を求めて』講談社学術文庫〉