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秋翳

《秋翳》1958(昭和33)年制作・東山魁夷 50歳
紙本・彩色 160cm×167.6cm/東京国立近代美術館蔵

 

三角形の紅葉の山

私には、ずっと以前、グレーの空を背景にして紅葉の山を描いた小品があった。紅葉の山というのは、秋晴れの青空を背景にすると、木や赤や朱の色彩が、その明度を増して、まことに鮮やかに見える。しかし、ある時の旅で私は少し薄曇りの空の下に、紅葉の山の一つ一つの樹相が、落ち着いた赤さで、静かに息づいている情景に心を打たれた。
私がこれによって表したいと希ったのは、秋の紅葉の山に見る冬の凋落を前にしての、豊かで、静かなるたたずまいともいうべきものである。
風景との対話/新潮社


三角形の紅葉の山、薄曇りの空。この単純な対比、分割による構図を長い間、考えていた。秋の紅葉の山を何度も見ているうちに、浮かんできた画想である。
冬の凋落を前にして、全山紅に彩られた静かではあるが、充実した山の姿が描きたかった。
『画集東山魁夷/三彩社』

東山魁夷主要作品